episode 11

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episode 11

土曜日の午後。快の実家に向かう。 車の中でも快は赤信号になると私の手を握る。 「あぶないよ」 「佐那を触ってると落ち着くんだ」 そんなことをさらっというんだから恥ずかしい。 「快さん、お待ちしておりました」 「親父は?」 「お部屋でお待ちです。」 「昨日はお世話になりました。」 「いえいえ」 快はスタスタと豊島社長の部屋に向かう。 コンコン 「どうぞ。快、急にどうしたんだ?お前がここにくるなんて・・・ん? 柳さん?」 「豊島社長、昨日はありがとうございました。」 「まさか・・・うまくいったのか?」 「親父、俺達 実は別のところで会ったことがあったんだ。その時から 俺は彼女の事が気になっていた。だからこのまま結婚を前提に付き合うから」 「会ったことが?そうなのかい柳さん。」 「はい。そうなんです。」 「無理やり付き合ってくれてるんではないかい?」 「親父・・・」 「そんなことないですよ。私も快さんとお付き合いしたいと思います。 すぐに結婚とはいかないかもしれないですけど・・・・」 「佐那・・・俺は佐那以外の女とは結婚なんかしない」 「快が柳さんに惚れているんだな。柳さん、快をよろしく頼みます。」 「いえ・・あっ・・はい」 「これから佐那のご両親のところにいって挨拶してくる。俺はすぐにでも佐那と結婚したいと思っているが、佐那は時間をかけて2人の時間を大事にしたいというから、一緒に住むことを許してもらって恋愛ってものをしてみるつもりだ」 「そうかそうか」 豊島社長は嬉しそうだった。 「来月に、TOYOの創立記念パーティーがあるから2人で来なさい」 「面倒だ。」 「お前には柳さん・・・佐那さんがいることを公表すれば縁談はもう こないのではないか?」 「確かに・・・佐那・・行くか?」 「そんなところに私が行っても大丈夫?」 「そんなことは心配しなくていい。ドレスは俺が準備してやるから。 親父、今回だけは出席してやるよ」 「分かった。リストに入れておく。佐那さんまたきてください」 「はい。」 と私達は快の実家を後にした。 車の中でほっと一息。 「緊張したーーー。快はやっぱり豊島社長の息子さんなんだよね・・・」 「そんなことは気にするな。俺は俺」 本人たちが気にするなといっても・・・うちの両親は大丈夫かな?? 途中で快が手土産を買いたいと言い出した。 「私、何も持って行かなかったよーー」 「うちはいいんだよ。佐那のところにはきちんとしたいんだ。車でちょっと 待っててくれといってどこかに行ってしまった。」 その間に母にもうすぐ着くことを連絡する。 しばらくして、いくつかの紙袋と花束をもった快が車にやってきた。 「何を買ってきたの?」 「みんなにはケーキを、お父さんにはお酒。お母さんには花を」 「気を使わないでよ」 お母さんが騒ぐなあ・・・・。 「ただいま・・・」 というとすごい勢いで母がやってきた。 「おかえりーー佐那。あらステキな方ね。どうぞ上がって」 「お母様ですか?大したものではありませんが・・・」 と花束と紙袋を母に渡す。 「ヤダ。男の人にお花をいただくなんていつぶりかしらね。他にもたくさん お気を使わせてしまって・・・。ありがとうございます。」 と母はリビングに私達を案内した。 リビングには父がソファに座っていた。 「お父さん。ただいま。」 「おかえり佐那・・・・。座りなさい。」 「うん」 と私達は父の前に座った。そこに母がお茶を持ってテーブルに置くと 父の隣に座った。 一瞬沈黙があったが、快がそれを破る。 「豊島 快と申します。佐那さんと結婚を前提にお付き合いをさせていただき たいと思いまして本日ご挨拶に伺いました」 「あら・・まあ・・・」 「実は・・・昨日お見合いをしたの。」 「お見合い!!」 「その相手が快さんだったんだけど・・・お見合いする前から知り合っていて ・・・」 「私が佐那さんに一目ぼれをしたんです」 「・・・・」 両親はびっくりしていた。父が静かに話す。 「豊島さんと言ったね。お仕事は何をされているのですか?」 「TOYOのグループ会社の1つを任されています」 「TOYO?ってあのTOYOかい?」 「快さんのお父さんはTOYOの社長さんなの・・・」 それにまたびっくりする両親。 「そんな方にこんな普通のサラリーマンの娘が相手だとまずいんじゃないか?」 「うちの母も一般家庭から嫁にきたそうです。父も佐那さんを気に入っています。なにより私に佐那さんが必要なんです。8つも年上のおじさんが相手で 私が申し訳ないくらいです」 「そうなんですか・・・」 「お付き合いを始めたばかりなのですぐに結婚という事ではなく、婚約者ということでゆっくり2人の時間をすごして結婚出来たらいいと思っています。」 「佐那は大丈夫なのか?」 「え?」 「私たちの知らないような、大変なこともあると思うぞ。 途中でやめたということは出来ないんだぞ」 「分かってる。自分の気持ちに正直になりたいと思ったの。正直今まで お付き合いした人いたけど、仕事を優先していつも可愛くないって1人で 大丈夫って言われてたの。でも快さんは仕事の事もわかってくれるし 弱みを見せられたの。お家の事を考えると大変なことは分かっているけど、 豊島社長もステキな方だったから、2人で進んでいって最終的に結婚出来れば いいかなって思う」 「そうか・・・なら2人で頑張ってみるといい。豊島さん。佐那をよろしく お願いします。」 「分かりました。お願いがあります。一緒に住んでもよいでしょうか? 私も佐那さんも仕事が忙しいのでなかなか会うことができません。 少しでも一緒にいたいと思うので、出来れは私のマンションで一緒にと 思っています。いかがでしょうか?」 「佐那がそれでよいのではあれば私達が反対することはありません。」 「ありがとうございます。」 勝手に話を進めてーーー。 「快さん、佐那を泣かせないでね。強い子じゃないのよ。頑張りすぎちゃう 子なの。」 「お母さんやめてよ・・・」 「お母さん、佐那さんを泣かすようなことはしません。お約束します。」 「そう言ってもらえると安心します。」 4人で和気藹々と話をした。 「今日はこの後予定があるので、そろそろ失礼します」 「そうですか?またいらしてくださいね。」 とリビングを後にして玄関で支度をしていた。 「ただいまー」 という声とともに玄関の扉が開いた。 「おかえりなさい。琉衣」 「ただいま・・・・」 と私と快さんに視線を向けた。 「弟の琉衣です。」 「初めまして。佐那さんとお付き合いさせていただいます。豊島快です」 「はあ。」 「琉衣!きちんと挨拶しなさい。来週、佐那が引っ越しするから手伝って あげなさいね」 「引っ越し??」 と琉衣の後ろから声がした。 「あら、大君も一緒だったのね。たいくんも手伝ってあげて」 泰司も一緒だったか・・・・。 「おばさん。なんで佐那が引っ越しすんの?」 「豊島さんと一緒に住むことになったのよねえ。」 と私達に笑顔で母が語り掛ける。 泰司は快さんに敵意むき出しでいう 「佐那。また捨てられんだから一緒に住むのやめた方がいいぞ」 「ちょっと泰司なんてこというのよ」 「佐那??」 快さんは不思議そうな顔で私を見た。 「弟の友達なんです。幼馴染でもあって・・・帰るね。」 と私は快さんと外にでた。 その後を泰司が追ってきて私の腕を掴んだ。 「泰司なに?」 「おっさんは若い女が珍しいだけなんじゃないの?」 「泰司やめて!」 「佐那も騙されてんだよ。俺にしろっていってんだろ?」 泰司の言葉で何かを察した快さんは、 「君だね、僕の佐那にキスマークを付けたの」 「だったらなんだよ」 「今回は許すけど、次は許さないからそのつもりで」 「はあ!俺が絶対に奪うからな」 「泰司、ひとまず部屋入れって」 と琉衣が泰司を連れて部屋に入った。 私はどうしたらいいのか分からず黙ってうつむいていた。 私の手を快さんがそっと握ってくる。 「ひとまず、車に乗って。ちょっとドライブしようか」 私はうなずいた。 車の中でも私は言葉を発することができなかった。 しばらくして車が停まる。 辺りを見渡すと公園の駐車場だった。 自分と私のベルトを外して、また私の手を握る。 「佐那・・・何を考えてる?」 「泰司が・・・失礼なこと・・・ごめんなさい・・・私が・・・」 私は涙が止まらない。快さんは私の涙を指で拭ってくれた。 「佐那は悪くないだろ?弟くんの友達だし、幼馴染だから無下にできな かったんだろ?」 「・・・でも・・キスマーク・・・」 「それはもういいから。佐那は俺を選んでくれたんだろ?」 「う・・ん」 「だったらそれでいいよ。彼の言うように俺はおじさんだし、佐那には もっと年の近いやつの方がいいかもって思ってもいい?」 「ダメ。快さんはおじさんじゃない。」 「この話はおしまいな。引っ越しは俺が一緒にやるから、弟くんたちには お断りして。」 「は・・い。このあと予定あったんだね。知らなくてごめんなさい」 「あれはウソ。早く佐那を抱きたくて。ダメだった?」 私は吹き出してしまった。 「佐那は笑顔がいいよ。かわいい」 と快さんは私に軽くキスをした。 「さてと、では俺たちの家に帰ろう!」 と快さんは車を走らせた。 ************************************* 「おばさん、あいつなんなの?佐那だまされてんじゃないの?」 「たいくん、大丈夫よ。TOYOのご子息なんですって」 「マジ!社長夫人かあ。やるなあ佐那」 「琉衣まで何言ってんの?」 「泰司、おまえマジで佐那を好きなの?」 「そうだけど。絶対にアイツから奪う」 「無理だって」 琉衣の携帯にメッセージがくる。 「佐那が、引っ越しの手伝いはいらないって」 「・・・・今日は帰るわ」 と泰司は柳家を出た。 この時、泰司は佐那を自分のものにするために最後の手段を 考えていた。
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