episode 14

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episode 14

週末、快のお父さんのパーティーに行くために 先週言ったR&Mに2人で向かう。 この前対応してくれた方が案内してくれた。 私と快は別の部屋に分かれてそれぞれ準備をする。 「佐那、俺は準備終わったぞー」 と遠くから快の声が聞こえた。 こちらも準備ができたので、快の所へ向かう。 「快・・・どうかな??」 「かわいいよ佐那。誰にも見せたくないな。」 快はシルバーのタキシードになっていた。 「さて、行きますか?お姫様」 と私を車までエスコートしてくれた。 会場に着くと、車の鍵を係の人に渡して助手席に回って私を 迎えに来てくれた。 降りたところには高級車がたくさんあって、豪華な雰囲気の人たちが たくさんいた。 きっと私は場違いなんだろうなと思った。 私の不安を感じてくれたのか、快は私の手を握ってくれた。 「佐那、大丈夫だから。そんな不安そうな顔するな。どうどうと してればいい。お前がこの会場の中で一番だから」 その言葉が魔法のように私を落ち着かせてくれた。 「行くか。」 と私を連れて会場に入っていく。 扉を開けると視線が一気に集まってきた。 いろんな色のドレスを着た女性達が快に熱い視線を送る。 そんな視線に見向きもせずに、快は私をお父さんの所まで連れていく。 「快。佐那さんよく来てくれた。ドレス姿もよくお似合いだ。」 「ありがとうございます」 「俺は、もう帰りたいくらいだ」 「そういうな。佐那さんと一緒の所をみたら変な縁談は来ないだろう。」 「そうだといいが・・・。」 快のお父さんの周りにたくさんの人が集まってきたので、私たちはその場から 離れた。 「佐那。俺の仕事の関係の人も来ているからちょっと挨拶してくる。 1人で大丈夫か?」 「うん。」 「すぐ戻ってくるからな」 と快は人ごみの中に入っていった。 私は飲み物をもらって、椅子に座って一息ついた。 お金持ちっていってはいけないんだろうけど、快のいる世界ってすごいん だとあらためて感じる。 「あなたは、豊島快さんとどういう関係なの?」 声の方に振り向くと3人の女の人に囲まれた。 「えっと・・・」 「1回寝てもらってこの場を収めるために連れてこられたの?」 「な・・・」 「どちらのお家の方なの?」 「・・・」 快・・・助けて・・・・。 「どうして黙ってるの?」 困り果てていると、 「みなさんどうしたんですか?」 「あら、堂島さん。この方が豊島さんと一緒にいたのでお話を聞いて たんですよ。」 「怖い顔でお話してましたよ。すてきなドレスが台無しですよ」 「嫌ですわ。怖い顔なんて」 とまた人が増えてしまった。 「堂島さん?私の彼女に何かありましたか?」 「豊島さん。あなたのお相手でしたか。相変わらずモテるから どのようなご関係か聞かれてこまってますよ」 「え?」 と3人の女性たちに視線を向ける。 「豊島さんはいつもお1人なのに今日は女性と一緒だったので・・・」 「どのようなご関係かなと思ってお話を伺っていたんですよ」 「そうなんですよ」 「そうですか・・彼女は私の大事な方です。」 「・・・・・」 3人は固まったが、そのうちの1人が、 「でも、加奈さんとお付き合いしているのでは・・・」 と小さな声でつぶやいたが、 そんなことはおかまいなしに、快は私の腰に手を回して笑顔で 「もういいですか?佐那、失礼しよう。」 とその場を後にした。 「ごめんな佐那。嫌な思いした?」 「大丈夫。堂島さん?が助けてくれて・・快も来てくれたから・・・ お仕事の話はもういいの?」 「ああ。あとは佐那をみんなに見せびらかすだけ」 「みせびらかすって・・・」 「俺の佐那はかわいいよぞーってな」 周囲からしたらきっとイチャイチャしているように見えているだろう。 それが、快とお父さんの狙い? その私達に向かってカツカツとヒールの音が近づいてきて 私達の間に入ってきた。 「快、会いたかった」 と快の腕にしがみついた。 「加奈、離せ。」 「どうして?私達付き合ってるんだからいいじゃない」 と私の方を向いていう。 「お前とはもう終わっている。」 「それは快が勝手に終わらせただけ。私は了承してないわ。 佐那さんといったかしら?私のいない間、快の相手をしてくれてありがとう」 と私に言った。 「・・・」 私は何も言えず、その場から逃げてしまった。 「佐那・・・」 快が私を追いかけようとしたら、女の人が引き留めた。 「お父様に紹介して」 「ふざけるな・・」 2人の話が聞こえた。快はきっと追いかけてきてくれるはず。 テラスにでた。 風がつめたくて少し寒い。でも中に戻ることも嫌で、我慢してその場にいた。 しばらくして肩にジャケットがかけられた。 「快」 と振り向くとそこにはさっき助けてくれた堂島さんがいた。 「すみません。間違えました。」 「大丈夫?豊島さんは桜咲さんを説得してるみたいだよ。」 「そうですか・・・」 「豊島さんはよっぽど君が大事みたいだけど、今までの女にだらしない 生活があだになったみたいだね。」 「・・・」 「僕は堂島尚人(どうじまなおと)です。」 「私は、柳 佐那といいます。」 「佐那さん。僕とお付き合いしませんか?」 「え?」 「一目ぼれしました。豊島さんより僕の方があなたを幸せにできると 思いますよ」 「・・・私には快さんがいるので・・・」 「桜咲さんはやっかいな方ですよ」 「・・・・快さんを信じているので大丈夫です。」 「まだ迎えに来ないのに?」 私がテラスにきてからどのくらいの時間が過ぎて立ったんだろう・・・。 私が考えている時に、堂島さんが私を抱きしめた。 「ちょっと・・・やめてください」 「やだ!私達お邪魔だったみたいよ。快」 そこには快とさっきの女の人がいた。 「ちが・・」 私はすぐに堂島さんから離れた。 快は私の腕を掴んで自分の方に引き寄せた。 「堂島さん。佐那に手をださないでください」 「君には桜咲さんがいるじゃないですか?」 「嫌だわー堂島さんたら」 「佐那は私の婚約者なので。いこう佐那」 と快は私にかかっていたジャケットを堂島さんにわたして 私の肩を抱いて会場に戻った。 ****************************** 「堂島さん、私達きっと同じゴールを目指せるはず。 私と手を組まない?」 加奈は尚人に持ち掛けた。 「遠慮します。僕は自分の力で彼女を手に入れますよ。あなたは あまり豊島家を刺激しないほうがいいかと・・・」 「は?」 「では。」 と堂島は会場に戻った。 「快は絶対にあきらめない」 ********************************** 俺は佐那を親父のところに連れて行った。 「おやじもう帰っていいか?」 「快、さっきのは何だ?桜咲さんのお嬢さんと何かあったのか?」 「昔な。今は関係ないが、向こう勝手に俺と付き合っていると思ってて 面倒なことになっている。」 「まったくお前は・・・だらしない。佐那さん申し訳ない。」 「いえ・・・」 「自分でなんとかできるのか?」 「なんとかする。ただ、佐那に手をだしてくる危険もある」 「よりによって桜咲さんとは・・佐那さん今のお仕事を辞めて私の仕事の補佐をしていただけないですか?」 「え??」 「それだったら安心だな。俺の秘書でもいいけど・・・」 「お前より私の方がよいだろう・・・」 「そうだな・・・」 話が大きくなっていく。桜咲さんとはいったいどんな人なんだろう・・・。 「俺が明日、佐那と一緒に佐那の会社にいって話してくる」 「あの・・・私・・・」 「佐那。ごめんな。でも佐那を守るためだから」 今の仕事は忙しいけど楽しかったのに・・・でも快の奥さんになるんだから 仕方がないのかな・・・。 危険って何が起こるというのだろう。 不安のまま会場を後にした。 ************************************* 次の日、快は私と一緒に私の会社にきて社長に退職の話をした。 社長と上司も 「残念だけど、将来は2人でTOYOをやっていくんだから 社長の下で勉強をした方がいいんだろう」 と言ってくれた。 私は上司と一緒に自分のオフィスに向かった。 「みんな、ちょっと聞いて。急な話だが柳さんが今日で退職する」 『えーーーーーー』 『仕事がまわりませんよーー』 『佐那さーん』 オフィスが一気にざわめいた。 そこに快が話を始めた。 「私は佐那の婚約者で豊島といいます。佐那には私の父のもとで仕事を 覚えてもらうことになりました。 急な話でみなさんにはご迷惑をおかけして申し訳ない。」 急に静かになる。 『佐那さんの婚約者?』 「えーと豊島さんはTOYOの社長の息子さんです」 『えーーーーーー』 『佐那さんセレブーーー』 などなどまたまた騒がしくなる。 「みんな。急にごめんね。みんなと一緒に仕事をした時間を忘れずに 新しいことにチャレンジしてくるね。みんなも頑張ってね!」 ちょっとしんみりしてしまった。 私も泣いてしまった。 引継ぎはリモートでTOYOに出社しながらすることになった。 手続きも郵送でとなった。 「ここにももう来ないんだね・・・」 「ごめんな。」 「私の事を思ってのことなんだよね。だからお父さんのところで頑張る! 仕事をさせてもらえるのは嬉しい。ありがと。」 「早くなんとかするから」 「う・・・ん」 私はこれから起こることなど考えていなかった。
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