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その足跡はぽつり、ぽつりと寂れた公園のベンチの片隅へと続いていた。雪で服が汚れようとも、濡れようとも、そんなこともいとわず君はベンチに座っていた。
僕は公園のたった一人分の足跡を見つめた後、そっと瞼を伏せた。誰かの迎えを待つ少女は僕なんかお呼びじゃないなんて言うように、必死に涙を流す。
徐々に白くなる公園に彼女が残した足跡だけが雪を溶かして世界を隔離した。
僕が踏み出しかけた足を彼女は一瞥すると、そのまま何も言わず僕の横を通り過ぎて帰路に着いたようだった。
僕は何度も彼女の足跡を辿った。何度か往復するうちに伝えきれなかった熱い思いが頬を伝って、僕はそれを乱暴に拭う。
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