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そろそろ、年貢の納め時ってやつかもしれない。
俺は、必死に足を動かしながらそう感じた。
後ろから聞こえる足音。徐々に大きくなってきている。
手についた血。証人。そして、金。
証拠は揃っているらしい。言い逃れもできない。
振り返ると、蓑笠を被り、長い棒を持った男が数人追いかけてきていた。
「っ! あの方向はあの怪物の住処だ……!」
「しっ。声を抑えろ。あれに聞かれたら、この世界が滅ぼされる」
慌てたように囁く声。もう、俺には虎の口だろうが悪魔の巣だろうが、選択する余地は無い。
考える間も無く、俺はその怪物がいると言う森の方向へ走った。
無我夢中で腕を振り、前へ踏み出す。
気付けば、足音が消えていた。おそらく、撒けたのだろう。
走り過ぎたせいで微妙に血の味がする気がする。
俺は咳き込みながら立ち止まり、膝を掴んで呼吸を整えた。
「……童が一人で何をしてるんだ?」
突然、背後からの囁きで俺は反射的に肘を背後に振る。だが、それは空を切った。
クスクスと笑う声がする。
慌てて周囲を見渡すが、どこにも人影はない。
「よく見たら、お前この辺で指名手配されてる奴じゃないか。いいね、面白い。もう少し顔を見せろ」
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