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背後で誰かが囁いた。
飛び退こうと地面を蹴るが、足をなにかにつかまれ地面に倒れ込んだ。
ぐいっと顎を掴まれ、顔を無理矢理上げさせられる。
抵抗しようとしたが、何かに押さえられていてできなかった。
「それにしても、この面が殺人鬼だなんてな」
相手の顔はよく見えない。なぜか、黒いモヤが掛かっているように見える。
だが、真っ黒の長い髪と紅い袴は見えた。
「はなせよ。あんたも殺されたいのか」
「ん? ああ、すまない。久々にヒトの方から来たから、何事かと思ったんだよ」
俺が声を低めながら言うと、顎の手が離れていく。
それと同時に、腕を押さえつけていたものがスルスルと消えていった。
振り返るとそれは———鎖。
「っ……!」
「おっと。逃がさないぞ」
とっさに立ち上がろうとした俺の首に、わずかに反った剣を突きつけられる。
俺は、肝が冷えた。
剣のことではない。
正面で俺を囲うように動く、鎖。何本も、何十本もある。
「さてと。時間はたっぷりあるはずだ。何してやろうかなぁ〜」
背後で笑う声がする。
俺は、本当に悪魔の棲に入ってしまったかもしれない。
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