再会

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再会

「いらっしゃいませ」 お客さんが入って来たからいつも通りあいさつした。 「…たー君」 聞き覚えのある声だ。 俺をそんな風に呼ぶ人間は限られていた。 別のお客さんへコーヒーを淹れていたが顔を上げると懐かしい人がいた。 「…ゆず?」 「たー君…会いたかったよ」 それは俺の従兄弟の譲で7年間全く会っていなかった。 ゆずはカウンター席に座って俺にコーヒーを注文した。 うちのカフェはこじんまりした店の為、今ここにはゆずと俺とスーツのお客さんのみだ。 少ししてお客さんが帰っていった。 するとそれを待っていたんであろうゆずが話しかけてきた。 「たー君久しぶり。カッコ良くなったね」 「なぁ、もうたー君て呼ぶのやめないか?大人のお前にそう呼ばれるのは恥ずかしいよ」 「何言ってるんだよ。たー君はたー君だ」 ゆずは仕事の合間に来たのかピシッときまったスーツ姿だった。 カッコ良くなったのはゆずの方だ。 もう幼さはなくなって俺の知る彼よりもずっと男前になった。 「良く俺がここで働いてるってわかったな」 「たまたま見た広告の写真にたー君が写ってるのを見つけたんだよ。ラッキーだった」 「ああ、取材の時ちょうど俺もいて店長がお前が写れってうるさくって」 「うん、すごくいい感じに写ってた。あの広告でたー君が1番良かった」 「褒め過ぎ」 変な気分だ。 そもそも俺たちの顔はよく似ている。 お互いの外見を褒め合うのもどうなのかなって気持ちになる。 俺とゆずの母親は一卵性双生児で、側から見れば歳の分の体格差があるから双子には見えなくても兄弟には見えていたと思う。 家もそう遠くなかったので幼い頃はよく一緒に過ごした。 「ねぇたー君。連絡先教えて」 「いいよ。番号?アプリ?」 「どっちも。今でもいい?」 ここには俺たちしかいないからスマホを持ってきてゆずに連絡先を教えた。 「あ、スマホの機種も色も同じだ」 「そうだな」 「せっかくだからカバーもお揃いにしたいな」 「なんでだよ」 「ねぇ、たー君」 「何?」 「連絡したらまた俺としてくれる?」 「………」 俺はスマホからゆずへ目線をずらした。 ゆずは柔らかな雰囲気のまま俺のことを見ていた。 俺とゆずには2人だけの秘密がある。
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