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酒
今日もゆずは仕事後来た様でスーツ姿だ。
いくら顔が似ていたって4年後の俺がゆずの様になっているとは到底思えなかった。
「ところで、1年続いた彼女は何がよかったのかまだ答えてもらってないよ」
「ん?ああ、よくわからないよ。短大の時だし」
「気になるな。何が良かったんだろう…」
その店は料理も俺が今まで行った店で1番おいしかったと思う。
あっという間に2時間が過ぎていた。
「俺の家が近いからこの後おいでよ。お酒も買ってもう少し話そう」
「ああ…んー」
「彼女は朝方帰ってくるんだろ?夜のうちに送って行くから大丈夫だよ」
「俺そんな話したっけ?」
「さっき言ってたよ。じゃないと俺がそんな事知るわけない」
ゆずはさっさと身支度をして出て行こうとする。
「会計は?」
「済ませてあるよ」
その店からゆずの家は本当に車で5分くらいの近さだった。
「普通の所でがっかりさせちゃったかな」
とかゆずは言うけれど、2LDKのきれいなそこは全然がっかりなんかしない。
むしろ今まで付き合ったどの子よりすっきりしていてきれいだった。
「良い部屋じゃん。がっかりって…お前は俺をときめかせたいのかよ」
「そうだよ」
さらっとそう言ってコートもジャケットも脱いで行く。
「着替えてくるね」と部屋へ行ったから俺はソファに座って勝手に買ってきたビールを開けた。
部屋に誘われた時点でもしかしたらと思ったけれど、ゆずは今日俺を抱くつもりなんだろうか?
「もう飲んでたんだ」
部屋着になったゆずが俺の隣に座る。
「わるい」
「ううん、のんびりして」
ゆずはミネラルウォーターの口を開けて「乾杯」と俺の缶ビールにコツンと付けた。
「ゆず…俺とが初めてだったんだよな?」
「そうだよ」
「俺の後に何人もした?」
「…そうだね」
「やっぱり男?」
「女とはできないよ。接するのも苦手なんだ。たー君は男は俺だけ?」
「そーだよ」
「今度はちゃんと気持ち良くなる様にするよ」
「やっぱり俺とやりたいのか…」
「それがすべてじゃないよ。最終的にはたー君に俺を好きになってもらいたい。
そこまでいくのに俺とのセックスを気に入ってもらえた方が早いかなって」
「自信あるんだな」
「はぐらかさないでよ。俺は真剣なんだ」
正直もうしてしまっているってのもあって、ゆずとまたセックスすること自体はそんなに問題無かった。
ゆずが男であっても、別に嫌悪感はない。
多分同性愛に偏見がない方なのだ。
友達にもいるし。
俺が心配しているのは、ゆずの気持ちの大きさがまだ計り知れない点だった。
俺はなんだかんだ女の子が好きだから、ゆずの感情が一時的でないのなら困る。
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