予想外

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予想外

 ゆずの部屋から出て車に乗り込む。 「大丈夫?腰だるいだろ」 「…大丈夫」 腰はだるかった。 同時に下半身が宙に浮いた様だ。 重いんだか軽いんだか。 どうでもいいんだけどそんな事を思って気を紛らわせる。 俺がシートベルトをしたのを確認してゆずは車を出す。 冬なのもあってまだ暗いが時間はもう3時になる所だった。 本当はもっと早く帰る予定だったのだけれど、俺は寝落ちしてしまってさっきゆずに起こされた。 「また、俺としてくれる気になった?」 「…んー」 「ちゃんと起きてる?」 「起きてるよ」 返事を濁したのは行為が悪かったからではない。 キスの時点で気持ちの良いキスだと思ったけれど… 「たー君も最後の方は腰が揺れてたね」 「言うなよ」 「ねぇ、正直に言って。どうだったの?」 悔しい気持ちだった。 あんな… あんな感覚知らない。 「ねぇってば」 「…良かったよ」 中二の頃した時の延長線上に考えていたから面食らった。 愛撫から最後までずっと気持ち良かったのだ。 確かにゆずのものが中へ入った時には圧迫感があったけれど、それも吹き飛ぶくらい良い所ばかり責められた。 「今日も朝から仕事なんでしょ?次は休みの前の日にしよう。彼女にも従兄弟の所に泊まるって言えばいいさ。事実だし」 「勝手に決めるなよ」 「良かったらセフレになるって言ったでしょ?」 「…そうだっけ」 「まだまだ気持ち良くなれるよ。同じ相手となら病気のリスクも少ない」 「俺を言い包めようとしてないか?」 「本当の事なんだから仕方ないよ。親戚だから言い訳もしやすい上に俺はたー君の事を良くわかってる」 「わかったから少し時間をくれよ。まだ寝起きで頭が働かないんだ」 「…そうだね。でも次会う日は決めておこう。いつが休み?」 「水曜日」 「じゃあ次は火曜日に会おう。いいよね?」 「…ああ」 とんとん拍子に次の予定まで決まってしまったけれど早く眠りたかった。 家に下ろしてもらったらすぐに部屋のベッドへ寝転ぶ。 奈々の帰る時間はまちまちだけれど、まだ帰って来ていなくて良かったと思う。 今日は疲れて言い訳を考えることもちゃんと出来そうになかったから。
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