Case 1

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Case 1

 突然、スマホの電源が落ちた。 「マジかよ」ジミー・フッカーは天を仰いだ。  お気に入りの動画サイトの視聴が中断したことよりも、大事な文書が消失してしまった可能性を考えて、彼は顔面蒼白となった。その文書を明日の朝一番でボスに送信しないと、彼は今の職場を失うかもしれないからだ。  よりによってこんな時に故障かよ、と思っていると握りしめていたスマホが〈ヴンッ〉と身震いした。  確かめると、真っ黒な画面の中で携帯会社のロゴマークが輝いていた。何らかのトラブルで再起動しただけのようだ。  ジミーは胸をなでおろした。 「驚かすなよ。マジで終わったかと思ったぜ」  しかし安心したのも束の間、明るく反転した画面を見て、ジミーは首をひねった。待受が見覚えのない部屋の画像にすり変わっている。  何かの加減で初期設定に戻ったのか……操作しようと指を伸ばした瞬間、突然、画面の中で人影が横切った。 「うおっ、なんだ!?」  静止画と思っていたものが急に動き出したので、彼は吃驚(びっくり)して手を離した。  床で軽く跳ねたスマホを急いで拾い上げる。これで壊れていたらシャレにならない。  画面は消えていなかった。  さっきと同じ部屋が映っている。 「なんか変なサイトにでも接続(つなが)ってんのか?」  すると、また人影が現れた。  首から胸元辺りまでが映り、一見して女性と分かった。興味を引かれたジミーが画面に見いると、女性が姿勢を低くしたので、その顔を確かめることができた。
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