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リハビリテーション室は、ちょっとした体育館くらいの広さがある。
緑の多い庭に面したここは、病院の一角だということを忘れてしまうような解放感と、爽やかな空気に包まれていた。
窓を開けてからモップをかけて、治療台の上をアルコールスプレーで消毒する。これが”若手”の私たちの、朝の仕事だ。
「佳乃、さっき高島先生に捕まってたでしょ」
「え?見てたの?」
同期の小百合ちゃんが、こそっと話しかけてきた。彼女も、ここに来て7年になる作業療法士。
「助けてくれればよかったのに」
「お邪魔したら、悪いかと思って」
悪いとは思っていない笑顔で、ペロッと舌を出してからモップを片付けている。
私より背が高くてショートカットの彼女は、性格もさっぱりしっかりしている。
「朝から、ついてない、今日」
私は、手を洗いながらブルーな空気を漂わせていた。とにかく、苦手なタイプどストライク、高島先生は。でも、医者にあからさまにそうは言えない。
「坂井さん、今日の脳外カンファ」
もう一人の同期の石井ちゃんが、パソコンの電源を入れながら声をかけてきた。
「うん、3時だよね」
「それがね、新しく来たDrが、早速手術のあるから、4時からにしてくれって朝一で電話があったみたい。科長が言ってた」
確かに、スタッフルームのホワイトボードの予定欄にある"脳カンファ”の横に赤で、大きく16時と書いてある。
ったく。こっちだって、スケジュールがあるのに。
「…午後の予定、組み直しか…」
仕方なく患者さんの予定表を睨んで、4時からの再調整を考えた。
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