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芯と静まり返ってひんやりとした空気に包まれた土間には、奥へ続く大きな扉やもう使われなくなった酒瓶を綺麗に並べた棚が佇んでいた。昔は、活気があっただろうこの場所は、時を止めたように空気が澄んでいる。
多賀谷先生は、おそらく今も大切にされているだろう古い椅子を私たちに勧めた。
「ここでは立場を抜きにして話をさせていただいてもいいですか」
椅子の横に立ったまま、脩さんが私の手を離さずに言う。聞いている口調ではない、それ以外の条件ではこのまま帰るという意味だと思った。
「もちろんそのつもりです。だから病院ではなく、ここで」
脩さんが、人に対してこんなに攻撃的な空気を醸し出すのを初めて見た。どんな理不尽なことを言う患者さんにも横柄な態度のスタッフにも、柔らかく優しく接する姿しか見たことがなかったのに。
こんなに、私のことを想ってくれていたなんて。私はそんなレベルで、脩さんのことを考えていない。
自分の須崎君への想いに気付いた上ところに、脩さんの私への想いが重なる。自分への失望と後悔で、頭の中が凍りつきそうだった。
この先の話ができる自信は、全くなかった。
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