1色目 絵描き + 生徒会 = ?

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……… … ガチャリと音を立てて 少し沈んだ心で生徒会室の扉を開く。 中にはまだ誰もいなかった。 「……」 いつも座る座席に行き、鞄を力無く落とす。 「……っはぁー」 椅子に座りながら白い長机に突っ伏して、 僕は深く大きなため息をついた。 またひとつ、教室で自分を偽ってしまった。 『五十嵐 奏汰』という個人の人間に 向けられる目は度々誤解され続けてきた。 成績優秀の優等生、人付き合いが上手く、 明るく気さくな陽キャそのもの。 僕もそんな向けられる目に対して、 周りが期待する自分になろうと 必死に勉強して、人付き合いも頑張った。 功を奏してか1年目から 生徒会副会長にも推薦された。 求められるがまま、望まれるがまま、 自分を作り上げてきた僕という人間は、 周囲のレッテルだけでできていた。 貼り付いたレッテルは、 まるで子供がペタペタと貼って遊んだ シール帳のシールようだった。 さながらそのシール帳が僕、 と言ったところだろう。 そんな生き方をしてきたから、 本当の自分がわからなくなる…… なんてことを言うほど 中二病なつもりでは決して無かった。 貼られたレッテル通りの『よくできた人間』 という部分も間違いなく僕であると思う。 期待に応えて努力し続けた結果があり、 今の僕がいるのだから それを否定するつもりは無い。 しかし、そんな『よくできた人間』なだけ では無いのもまた事実だ。 僕だって機嫌悪く怒ることはあるし、 できれば怠けて生きていたいし、 なにより好きな趣味だってある。 そんなことを思いながらスマホを開く。 フォルダ分けされたファイル階層を 何階層も下に下に潜っていく。 パスワードを入れてフォルダを開くと… 「……はぁー、癒し」 画面に映る『プリジェル』の天月美羽ちゃん を見て僕はそう呟いた。 隠すように奥の奥に追いやられた階層に 大量の2次元絵と動画、音楽の数々。 僕は紛れもないオタクだった。 しかも結構重度の。 将来のためと偽って始めたバイトの ほとんどを『プリジェル』につぎ込んでいる。 グッズや円盤なんて当たり前、 映画なんて特典目当てで2桁回はざらに観る。 ぶっちゃけキモイと思う。 正直自分でも引いてる。 レッテルという名のシールを剥がすと そのシール帳はゴリゴリのアニメ手帳でした、 ということである。
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