1色目 絵描き + 生徒会 = ?

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「なぁなぁ!春休みの『プリジェル』の映画、  お前見に行くか?」 「当たり前だろお前!3周は確定っしょ」 「だよな!?俺、天月美羽(あまつき みはね)ちゃん推し  だから今回の映画は5周はするわ!」 彼らの口から痛々しい言葉が耳に届いた。 彼らは嬉々として自分たちの アニメ趣味を語らっている。 魔法天使プリティ・エンジェル、 通称『プリジェル』。 日曜朝にやっている女の子向けのアニメで、 魔法少女が戦う系のよくあるやつである。 人間界に蔓延る悪魔たちを 魔法で倒していく天使たちの物語である。 基本は女児向けのアニメだが、 深いストーリーや可愛らしい容姿などから、 所謂『大きなお友達』と呼ばれる人たちも多い。 ちなみに天月美羽は主人公。 下界におりてきて悪魔を倒す姿が可愛らしい。 なんで僕がこんなに詳しいのかと言うと…… 「……あーやだやだ、  明日でこのクラス終わりだけど、  アイツらとは終始仲良くなれなかったわ」 「えー、それな?ぶっちゃけキモイ」 誰に言うわけでもない説明を 頭の中で広げようとしたが、 彼女達の声で我に返る。 周りにいた女友達たちがそんな声を上げる。 嫌悪を隠すつもりがあるのかないのか、 声量はそこまで小さくなっていなかった。 「まぁ、それは俺も思うなー、なぁ奏汰?」 「えっ?」 同意を求められ驚きつつ、 教室の隅にいる彼らに目を向ける。 女の子たちの声が耳に入ったのだろうか、 表向きは気にしていない素振りを見せつつも 耳だけはしっかり立てているように見えた。 「……あー」 友人たちからの圧力を受け、言葉につまる。 「…ま、まぁ大きな声で話すのは良くないよね」 当たり障りないとも言うような ブーメランとも言うような そんな言葉で同調した。 「だよなぁー、わかる!」 「それなー!てか、早くカラオケ行こー」 「そうだねっ、またね、五十嵐くん」 「奏汰、またなー」 「あ、あぁ…またね」 そう言って友人たちはゾロゾロと出ていった。 オタ話に花を咲かせていた彼らが もう一度気になってそちらに目を向けると、 僕と出ていった友人たちを 恨めしそうに睨みつけていた。 胸が痛くなる。 まさか僕も、彼らと同じ穴の狢だとは とてもじゃないが口にすることは出来なかった。
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