1色目 絵描き + 生徒会 = ?

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…だからこそ、さっきの友人たちの発言は 自分に言われた気がして少し堪えた。 そして本来なら同じはずのオタクな彼らからも 恨みの視線を向けられてしまう。 僕は自分のことが好きになれない。 周りから見た自分と本当の自分。 そのどちらにもなりきれない、半端者だった。 「……あー、癒し」 鬱になった気持ちを払拭するように 美羽ちゃんの画像を見る。 あー、今日も推しが可愛い。 自分の悩みとかどうでも良くなるなー。 「一体何が癒しなのかな?」 「……うわっ!!!」 僕の頭の上から 凛とした綺麗な女性の声が降る。 驚いて跳ね起きながらも瞬時に頭を切り替えて、 目にも止まらぬ早さで スマホのアクティブなタスクを全て落とす。 「…そんなに驚かなくてもいいじゃないか」 「……いえ、すみません」 綺麗な目をパチクリとさせながら、 1人の上級生が驚いていた。 「…随分早いですね、一百野(いおの)先輩」 「普通くらいではないかな?  早いといえば君も早いではないか。  まさかとは思うが、君は仕事が好きなのか?  …変わったやつだな」 「いえ…教室にいたたまれなくなったので…」 「ふむ…そうか。  …あぁ、それと私のことは会長と呼ぶように  再三言っているつもりだが?」 「……すみません、一百野先輩」 「まったく…君は優秀なのに  学習能力がないらしい」 深いため息をつきながら 長い茶髪を揺らして会長席に腰かける。 声をかけてきたのはこの学園の生徒会長、 一百野(いおの) (しおり)さんだった。 僕のひとつ上、今年の春で3年生の彼女は 長い茶髪と澄んだ瞳が特徴的な 同年代とは思えないほど大人っぽい女性だ。 僕のことを咎めながら席に座る その動作1つ1つが彼女に似つかわしい 優雅さを纏っていた。 「……ところで、さっき君はスマホで  どんな過激なプレイを見てたのかな?」 「そんなの見てないです」 「ふむ、そうか…。  君が癒されるほどのものだから、  それはそれはすごいものを見てるのかと…」 …僕のことをなんだと思っているのだろうか。 彼女の右腕としてやってきたつもりだが 今日ほど副会長職を降りたい と思ったことは無い。 いや、いつもこうやって淡々とからかうから 本当は毎日辞めてやると思っている。 優雅云々の話は前言撤回。 優雅さの欠けらも無い下世話な話を振られ、 気品ある生徒会長の面影は 僕の頭から消し飛んだ。 ……いやまぁ、それなりに バレたらやばいものは見てたけど。
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