1.花は折りたし梢は高し

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「朝帰り」 「……そんなこと言われても、盛り上がって飲み過ぎることだってあるし」 「首、痕ついてるぞ」  え?  咄嗟に、左手で首を覆った。  嘘でしょ透さん、そんなのこれまで一度もしたことなかったのに。最後だから?   やだ、鏡を見にいかなければ。  公ちゃんには、絶対に見られたくない。 「ばーか、嘘だよ」 「は?」  うわ、カマかけた。  丈は涼しい顔をして、長い足を組替える。  見え透いたウソを吐くなよと、言われなくてもそう言われたのがわかった。 「急に何? 丈には関係ないと思いますが」 「まあ、そうだな」 「むかつく、きらい」 「子どもかよ」  なんの話もしていないのに、私の心の中を見透かしたような顔をする時がある。  実際にお見通しなのかもしれないけれど。 「彼氏がいるなら連れて来い。俺らに会わせられない相手なら、今すぐやめろ」 「俺らって、公ちゃんと丈?」 「そう」 「なぜ君たちに紹介しなけりゃいかんの」 「いるのか?」 「いないし、後ろ指差されるような相手との付き合いは絶対にないから」 「……あ、そ」  道ならぬ恋に溺れるなど、私にはありえない。自分の気持ちをコントロールすることだけは得意なもので。知らないと思うけど。 「溜息吐かないでよ、心配ご無用ですから。それにもうこういう事はないと思うし」 「そういう事って何、泊まり?」 「そう、!……別れてきましたから、今朝」 「……」  嘘だとバレバレなのに誤魔化すのも恥ずかしくなり、開き直った。 「結婚相手を探したいって。私ではダメ」 「結婚て……どういう事? 意味がわからないんだけど。相手はおまえではダメなのか? そいつちゃんとした奴なんだろ? つき合ってたんだろ?」 「私がしたくないから。結婚なんて全然」 「……それは、そうでも」 「価値観は人それぞれだから、どう生きようが自由だから、仕方ない。あ、コーヒー入ったみたい、あとは自分でして。じゃ!」 「おい」
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