6198人が本棚に入れています
本棚に追加
公ちゃんと丈と私、いつもの、三人の。
幾度となく繰り返されてきた何気ないこの時間が、私は好きだ。
他の楽しいをいくら知っても、幸せを別の場所に求めてみても、どうしてもここと比べてしまう。心が返ってきてきてしまう。
子どもの頃の居場所なんて皆さっさと卒業してどんどん先へ進むのに、私はまだここにいる。開き直ったかのような厚かましい顔をして、過去にできない。
久しぶりに公ちゃんの顔を見て、顔が緩んでいた。
元気そう、特に変わりは無いだろうか、
早く着替えて下に行かないと、キャンプに出掛けてしまう。
白シャツにジーンズ、きれいめの普段着に急いで着替えて、髪を緩くひとつに纏めた。
部屋を出る前、壁に掛けられた鏡を見る。
──あ、これ、
キスマークとはっきりわかるような痕ではないが、薄く擦れたようなピンク色の痕があった。これは、多分そう。
丈のやつめ、目敏い。嘘じゃないじゃん。
朝感じた寂しさや焦りの気持ちを忘れたかのように平然とした顔で浮かれている事を、透さんに責められているような気がした。
もうとっくにお気づきかも知れないが、
私は血の繋がらない兄、公亮に、特別な感情を抱いている。
本人は全く知らない。仲の良い家族の良き妹で、家族として大切にされているとは、思っているかもしれないが。
勿論最初からそうだったわけではない。
あまりにも長い歴史がある一方的な思いは、ひと言で説明するのは難しく、今に至るまでいろいろなことがあった。
何度ショックを受けて傷ついても、誰かに相談できることではなく、その度に止めようと決意しても、どうにもならなかった。
いつの頃からか悟りの境地で、自然にもういいやと思える日まで、自分の感情に逆らうのは止めようと決めた。それがあって、他の誰かと結婚する気もないわけだが。
最初のコメントを投稿しよう!