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「何も面白いもの出てこないぞ」
「え、すでに面白い。台所が丈っぽい」
「台所はまあ、使うからな」
「男の人の一人暮らしの家に来る機会なんて無かったから新鮮で」
「ふーん、実家暮らしと付き合ってた?」
「いや、多分違う」
「多分違うって、知らないの? 一体どんなつき合いをしてきたんだ」
本当にね、表面だけのおつき合いだったのでしょうね。相手には聞かないし相手も何も言ってこなかった。興味が薄かったか、深く関わる気がなかったか。
部屋に来ない?なんて誘われなかったし、誘われたとしても行かなかった気がする。
例えば夜に会って食事に行くとか、飲みに行くとか、次の日が休みならそのままホテルに行くとか。休日に会って一緒に過ごすこともあまりなかったな。……あ、でも一度だけ映画に行ったことはある。丈に言ったら「は?」と言われそうな話しか出てこない。
部屋の大部分を陣取っているベッドに腰を下ろすと、丈も隣に来て座りそのままベッドに寝転んだ。丈に平行になるように私も横になり、お互いに耳のあたりに頬杖をつき顔を見合わせる。
丈が私を見たまま、視線を外さない。
「……やっちゃったな」
「……あのね、やっちゃったなじゃないよ、どうするのこれから」
「イヤじゃなかった?」
「今、それを聞きます!? なに? 順番が違うと思うんですけど、つき合えとか部屋に連れてくる前にさ、どうして私と?」
本当にお恥ずかしい身も蓋もない会話だが、丈となら格好つけず素のままで話せる。
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