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「碧が可愛かったからかな」
「……答えになってない。それに可愛いとか言ったことないじゃない、恥ずかしすぎる。丈から言われるのは慣れないよ」
丈はこの上なく楽しそうに、へらへらしている。
「私とつき合って何をするの?」
「中学生みたいな質問だな。まあそうだな、用もないのに会ったり連絡を取り合ったり、一緒に飯食って寝てキスしてやることやっていちゃいちゃして」
そういうことが聞きたいわけではなく!
でもやっぱりそうね、いちゃいちゃも全て込々なわけよね。一晩限り、ではなく。
「セ、セフレ」
「いや、違うから。碧が嫌ならもう、指一本触れない」
「……」
「つき合ってる、間はもちろん碧だけ」
その言い方は、なんだかずるい。
それにイヤではない、全然イヤではなく、むしろ……それが自分でも理解できない。
「イヤじゃない、丈に触られるのは」
「…………おいで」
言われるがまま丈との距離を詰めると、ベッドに寝転んだ状態で引き寄せられ、抱きしめられた体勢になった。私の額に丈の顎。
昨夜慣れてしまった、丈の匂いがする。
「困ったな」
「なにが?」
「……いや、何でもない。碧の好きなようにしてくれていい。どうしたい?」
どうしたいって…………あ。
「丈と一緒に食事がしたい」
「結局それか」
「だって丈と食べると美味しいものにありつけるんだもん。さっき食べた定食もすっごく美味しかった」
ここに来る途中、丈行きつけの渋い定食屋さんに寄って、魚の煮付けと揚げ出し豆腐がメインの定食をいただいた。昨日の夕飯をすっ飛ばしたことを思い出して、見た瞬間にお腹が鳴った。美味しすぎて箸が止まらず、丈も嬉しそうだった。
丈が美味しいと気に入っているものは、例外なく私もすごく美味しい。
「食はライフワークだからな」
「でも本当は丈が作ったごはんが一番好き」
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