5.甘い手

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 私の眠るすぐ横に腰を掛け、ギシリと少しベッドが軋む音がした。 「……おかえり」 「ただいま、起こしちゃったな」  間接照明だけの薄暗い部屋の中に、ぼんやり丈が見える。ベッドサイドの時計はもう、日付が変わっていた。お疲れさま。 「……LINEしたんだけど見れなかったよね、急に来てしまった。夕飯勝手にいただいて、それで……」 「いいよ、寝てて」  何がおかしいのか、笑いながらおもむろに私の頬を撫でる。 「LINE、仕事終わってから見た。不意打ち」 「なんか今日疲れて」 「それでいい」  丈の言い方が(なん)となく可笑しくてクスクス笑いながら、何に疲れていたかなんてもう、どうでもよくなった。  帰って来てから時間が経っているのかな。もうシャワーを浴びたのか、丈から、さっき私が使ったシャンプーと同じ匂いがする。 丈は座ったまま半身だけベッドに横になり、薄目を開けている私の顔を覗いている。 「明日も朝早いだろ?」 「うん……でも、大丈夫、ここ近いから」 「……おやすみ」 「……オヤスミ」  このまま、寝るのだろうか。  寝るのだろうな、今日も。  丈は変な体勢のまま静かに目を瞑った。  初めて私の部屋で関係を持ってからひと月近く経つが、実は、二度目はまだない。 何度か泊っているし、セミダブルのベッドに二人で身体を寄せ合って眠っているにもかかわらず、お互いただの抱き枕状態、それ以上進む気配がない。おでこや頬に触れる程度のキスはされるものの、唇にはしない。
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