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記念日は特別な食事をする、という約束を丈は実行するつもりのようで──。
最初の○月7日は、私が仕事の打ち合わせで残業であることを伝えると、丈も当然夜は仕事で、帰りは丈の部屋に寄る約束をする。
アパートに着いたのは22時を過ぎていた。
テーブルの上にちょこんと、小さなお重、のようなお弁当が二つ。
私と丈の夕食、だと思う。
蓋を開けて、あまりの美しさに驚いて数秒固まった。そしてその後はスマホで激写する。す、すごすぎるんだけど…………。丈が言っていた通り特別感が半端ない、お手製のお弁当だった。
夜遅く食べることを考慮してか、揚げ物など脂っこいものは一切入っておらず、身体に優しいおかずばかり。しかもどれをとっても私の好物だった。
一人で床に座り、お弁当の前で正座して、一品一品を噛みしめながら食べた。
これをわざわざ丈が仕事に行く前に作ったの? 一緒には食べられないけど、自分の分まで。
ちょっと待って、ダメだダメだ、毎月七日とか、こんなの負担になるって。
丈がマメなのか、女性に尽くすタイプなのか、こんな風に誰かに何かしてもらった経験がないので、どうしたら良いかわからない。私なんかのために無理をしないで欲しい。帰ってきた丈にそう訴えると、
「大丈夫だって、俺一応プロだぜ?」
「わかるけど、勿体無くて食べられないし」
「全部きれいに食ってるじゃん」
「すっごく時間かけて食べたわ! 美味しかった、けれども!」
「それで起きて待ってたのか?」
「あのね、こんなお弁当食べて、ハー美味しかったーーって眠れるほど厚かましくない」
丈は笑って、私の反応を気にする様子もなく、自分で作り上げた芸術のような弁当をあっという間に平らげた。
「こういうの考えるの好きだからな、来月はまた別パターンでいこう」
「いいよいいよ、本当にもっと手抜きのやつで。うどんとかラーメンとかさ」
「ああ、それもいいな」
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