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キャラの強そうな人物の登場に急いでカメラを回そうとするスタッフを完全無視し、占い師は鷲尾のカクカクと高い鼻先にぬーっと顔を近づけ、
「破壊と再生──きみには生まれ変わりの相がでている。凄まじい変態パワーだ」
今にもオペラでも歌い出しそうな厚ぼったいダンディボイスが、鷲尾の背筋をぞくりと撫でる。
「は? 破壊と再生と変態って……なんスかそれ」
頼んでもないのに占われ、『変態』呼ばわり。
ムッとする。眉間にシワが寄りすぎて、口を閉じた狛犬みたいな顔になる。
周りのスタッフはケタケタ笑っている。「変態パワーって」「大当たりじゃん?」と小声でいじってくる始末。
「きみは新たな可能性に生まれ変わる。とくに春の頃から覚悟せよ」
オッサン占い師だけが真剣そのものだ。
「死ぬってコトすか?」
「そういう話じゃないのよ」
テレビマンが異世界転生し、ネガティブ勇者が伝説になるまでの密着ドキュメンタリー番組を撮る──とかじゃないらしい。
「オレは具体的にどうすれば?」
「盛り塩でもしておけばなんとかなる。変態だから」
あとは何を聞いても「3800円な」と、ツヤツヤでふくよかな手のひらを突き出してくるばかりだった。
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