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第2話 失恋と立ち退きと中の人
◆ ◆ ◆
「鷲尾くーん、お待たせしました……。はああ」
生放送終了時と同じ青白い顔の一條さんが、よろめきながらやってきた。
廊下と物置の狭間にある小さな空間。休憩兼サボり場所だ。
もともとは喫煙所として使われていた南向きの凸。
「今日は反省するところがありすぎて、どこからどうしたらいいのか……あははは」
「とりあえず、おつかれっす! 無事に終わったからいいんですよ」
「無事か……あんなの無事って言っていいのかな。マイナス120点ぐらいの出来だよハハハ」
「一條さんったら採点厳しっ! マイナス5点の間違いでしょー!」
「いずれにせよマイナス……やっぱりそうだよね……最低最悪で救いようがなかったよね」
「いや、あの、いや……冗談っす。そんなに真に受けないでください」
生放送後の反省会のあと、一條さんと鷲尾はささやかに励まし合うのが日課になっていた。
失敗続きの気象予報士と駆け出しのディレクターは局内で肩身が狭い。
二十代半ばで年が近いこともあり、生傷を舐め合うように意気投合していた。
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