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プレゼント
コンコン。
「おはよう」
私が窓ガラスを叩く。
すると君は
「ふわぁああ」と小さな息を吐いた。
私の毎日の日課…それが1日の始まりに彼女に挨拶をすることだ。
私と彼女が出会ったのは半年前。
春の日差しの暖かい午後の事だった。
朝早く陽が出る前から空腹で、旅行を続けていた私は疲れ果て、公園のベンチの日影で休んでいた。
彼女「大丈夫?」
ふと後ろから何かが動く気配がした。
驚いた私は身を硬くし、その相手を凝視した。
…可哀想な飛べない生き物!
彼女は私の前に、パンの欠片をまいた。
お腹が空いていた私は、恐怖を忘れてそれに食いついた。
それから私たちは晴れた日に時々、その公園で落ち合うことになった。
君はいつも僕にご飯をプレゼントしてくれる。
なぜなんだろう?
もしかして、僕の事を…?
僕の疑問が確信に変わる頃には、夏が来た。
「いつもプレゼントありがとう。僕からも採れたてのご飯のお返しだよ。愛してる。」そう言って彼女のベランダのバルコニーを毎朝訪れる。
だけど、僕のプレゼントに彼女はいつも気づいてくれないんだ。
そんな毎日を過ごしているうちに、いつしか日が沈む時間が早くなった。
ブルブルブル!!!
思わず身に刺さるような冷気を感じて、身震いをした。
「寒いな。」
…もうすぐ秋がくる。
彼女はいつか気づいてくれるだろうか?
君を想い、バルコニーに毎日つけた私の足跡に。
私はまた行かなくてはならない、愛すべき飛べない君を置いてきぼりにして。
お願いだから、私を忘れないで。
私が帰る場所は君だけなのだから。
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