プレゼント

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

プレゼント

コンコン。 「おはよう」 私が窓ガラスを叩く。 すると君は 「ふわぁああ」と小さな息を吐いた。 私の毎日の日課…それが1日の始まりに彼女に挨拶をすることだ。 私と彼女が出会ったのは半年前。 春の日差しの暖かい午後の事だった。 朝早く陽が出る前から空腹で、旅行を続けていた私は疲れ果て、公園のベンチの日影で休んでいた。 彼女「大丈夫?」 ふと後ろから何かが動く気配がした。 驚いた私は身を硬くし、その相手を凝視した。 …可哀想な飛べない生き物! 彼女は私の前に、パンの欠片をまいた。 お腹が空いていた私は、恐怖を忘れてそれに食いついた。 それから私たちは晴れた日に時々、その公園で落ち合うことになった。 君はいつも僕にご飯をプレゼントしてくれる。 なぜなんだろう? もしかして、僕の事を…? 僕の疑問が確信に変わる頃には、夏が来た。 「いつもプレゼントありがとう。僕からも採れたてのご飯のお返しだよ。愛してる。」そう言って彼女のベランダのバルコニーを毎朝訪れる。 だけど、僕のプレゼントに彼女はいつも気づいてくれないんだ。 そんな毎日を過ごしているうちに、いつしか日が沈む時間が早くなった。 ブルブルブル!!! 思わず身に刺さるような冷気を感じて、身震いをした。 「寒いな。」 …もうすぐ秋がくる。 彼女はいつか気づいてくれるだろうか? 君を想い、バルコニーに毎日つけた私の足跡に。 私はまた行かなくてはならない、愛すべき飛べない君を置いてきぼりにして。 お願いだから、私を忘れないで。 私が帰る場所は君だけなのだから。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!