難波みくの都合

1/25
前へ
/141ページ
次へ

難波みくの都合

 思い返せば、みんな普通の男性だったのだ、と思う。好きだ、と異性として魅力的だと感じれば、触りたくもなるし脱がせたくもなる。その感情はいたって普通で、当然で、妥当で、嫌だった。  それらの感情には、どこにも、どこにも、私の気持ちは存在しない。誰かの時に、聞いてみた。 「ねえ、今日はさ。抱き合うだけにしない?」  すると彼はこう言った。 「はあ?じゃあ、帰れよ」  当たり前、なのかもしれない。付き合う一歩手前なのだから。体くらいでとやかく言うな、それもそうかもしれない。でも、悲しかった。服を脱がされた時も私を見てるんだか、見てないんだかわからない視線が揺れた時も。悲しかったし、怖かった。だからもう、私はもう恋愛をしないのだ。  どんなに取り繕っても、所詮男性は男性なのだから。おかしい私に合う人は、この世にきっといない。それでいい。自分がおかしいんだから、誰かに合わせてもらう必要はないんだ。  私も相手に合わせて自分に無理を強いるほど、相手のことを好きなわけじゃない。思えば、一度だって濡れたことはなかった。あれやこれやと塗りたくられて、どうにか性交が成功しただけなのだから。私は何もかもに向いていない。だからこのままひっそり、生きていけたらいい。 「みーくーちゃーん!」
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

66人が本棚に入れています
本棚に追加