聞こえるはずのない声

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式が無事に終わり、チャペルを出たところで 何故か知佳ちゃんを含めた女の子達がソワソワ し始める。 そんな中、新郎新婦はみんなの祝福の声の中を 歩いていく。 後輩である新婦の目にはキラリと光る涙が。 その姿を見て、また泣きそうになってしまった。 「真白さんって結婚願望あるんですか?」 ふいに瀬戸君に聞かれた私は、顔を見上げる。 「あるよ。 人並みにはね。」   「そうですか。 それならよかった。」 それだけ聞いて、瀬戸君はまた新郎新婦に視線を 戻した。 何が"よかった"のかよく分からない。 気にはなったけど、今はとりあえず結婚式のこの 幸せな空気にどっぷり浸かっていたかった。 みんなの中を通り抜けた新郎新婦。 その瞬間、さっきソワソワしていた女の子達が ドドドッと凄まじい勢いで駆け出した。 それはもうまるでバーゲンセールのように。 何事かと思って呆気にとられていた私は、その 女の子達の群れから少し離れた所で傍観していた。 新婦は手に持っていたブーケをフワッと高く放る。 そこで初めて気づいた。 ブーケトスのことに。 女の子達がぐっと手を伸ばす中、そのブーケは 綺麗な弧を描いて思いの外遠くまで飛び、そして 「えっ…!?」 ───ポスンと、私の手元に収まった。
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