ss/ 愛しい声

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昴君の居なくなった寝室は静か過ぎて寂しい。 優しいから私が眠れるように気を効かせてくれたの かもしれない。 そうは思っても、体がダルいと気持ちまでそれに 引き摺られるようにしてずんと重くなる。 …怒ってるよね。絶対。 怒ってる?なんて正面きって聞かなくたって 分かる。 だって私は奥さんなんだもん。 もう昴君の心の声は聞こえないけど、その顔を 見れば分かるんだ。 「ん………」 泣きそうになって慌てて息を止める。 本当に情けない。 自分が嫌になっちゃう。 何でよりによって昴君の誕生日に風邪をひいて しまったんだろう。 忙しい中わざわざ休みをとって、久しぶりに二人で ゆっくりデートしようねって約束してたのに。 すっごく楽しみにしてたのに。 結婚してから初めての昴君の誕生日だったのに。 あれをしてあげようとか、これをしてあげようとか それはもう張り切って準備をしていた私が馬鹿 みたいに思えた。 体調管理が出来てないとか社会人失格。 ううん、それ以上に旦那さんを喜ばせてあげられ ない奥さんとか奥さん失格だよね。 昴君は家事も完璧で、料理なんか私より上手いし 文句のつけようがない旦那さんなのに。 だからこそ、今日は頑張っておもてなししようと 思ってたのに。
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