ss/ 愛しい声

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ただでさえ泣いてしまって呼吸が苦しい上に 鼻もつまってるから、息が出来ない。 目で訴えると昴君は手を離してくれた。 「こんなことで嫌いになる? まさか。俺をなんだと思ってるの?」 「だって…せっかくの誕生日なのに… 私が風邪ひいちゃったから…」 「だから?」 「だから、怒ってるよね…?」 恐る恐る顔を見上げれば、またはぁっとため息が 返ってくる。 あからさまにムスッとした昴君は今度は私のほっぺをつかんだ。 地味に痛い。 「怒ってるよ。 俺自身にね。」 「え…?」 何で昴君が自分に怒るのか分からない。 その意味が理解できなくて黙ってしまった私の ほっぺをゆるゆると伸ばす。 やっぱり地味に痛い。 「だって真白さんが今日のために毎晩遅くまで 起きていろいろ調べてたの知ってたのに、止められ なかったから。」 「昴君…」 「俺のために頑張ってくれてるのが嬉しくて 止められなかった。 そのせいで体調崩させた自分に怒ってる。」 いつもはデートプランは昴君に任せっきりだから たまには私に任せてって言い張って、インター ネットとか雑誌を見ていろいろ調べてた。 そういうのは楽しかったし、全然苦痛じゃなかった んだけど自分で思ってるより負担はかかってた みたい。 でもそれは昴君のせいじゃなくて、私が勝手に やってなったことなのに。 胸がぎゅーっと締め付けられる。 突然、パッとほっぺから手を離した昴君は何を 思ったのかそのままベッドに手をついて顔を寄せて きた。 抵抗する暇なんてなくて、あっと言う間に唇を 奪われてしまう。
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