ss/ 愛しい声

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「んーっ…!!」 何とか抵抗しようと手で胸を押し返しても、もう 片方の手に絡めとられてしまう。 とても病人にするようなものじゃない、深いキスを くり返す昴君。 すっかり力が抜けてしまった私の唇を最後に チュッと吸って顔を離した。 「はぁ、はぁ、風邪、うつっちゃうよっ?」 「うん。」 「うんって…」 「俺にうつせばいいよ。 真白さんが辛いのは嫌だから。」 そんな台詞をサラッと言ってしまう昴君は やっぱり王子様なのかもしれない。 私の前ではちょっぴり意地悪だけど。 でも、優しい優しい旦那さま。 絶対に今ので熱は更に上がったと思う。 きっと顔も真っ赤になってるはず。 ただ私にも譲れないことがある。 「私だって、昴君が辛いのは嫌だよ?」 好きな人が苦しんでる所なんて見たくないに 決まってる。 なんか昴君ばっかりカッコつけてずるいと思った。 珍しくキョトンって顔をしたと思ったら急に覆い 被さってきて、またキスをされるんじゃないかと 咄嗟に唇を手で隠す。 でも昴君はまるで力をなくしたみたいに私を 抱き締める形で、そっと肩に頭をもたげた。 「何なの。」 「…何が?」 「何で襲えない時に限ってそういう煽るようなこと 言うの?」
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