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やや掠れ気味の声にドキッと心臓が跳ねる。
さっきまでの勢いはどこに行ったんだろう。
まるで甘えるみたいに首筋に顔を埋めてくる昴君が
可愛くてそっと髪を撫でた。
「襲ってもいいよ…?」
「駄目。」
即答した昴君はバッと体を起こす。
そして、どこか拗ねたような顔をしてじっと私を
上から見つめた。
不意打ちの飾らない素顔にキュンとしてしまう。
「とにかく早く風邪を治して。
そしたら今日のやり直しをしよう。」
うんって深く頷けば、やっと笑ってくれた。
私の涙ももうすっかり止まってる。
暫く見つめ合っていた私達だけど、ふいにまた昴君が動いた。
「ちょっ…!!」
襲ってもいいよなんて言ったけど、やっぱり風邪を
うつしたらいけない。
そう思って、また手で唇を隠そうとしたのに
その動きを読んでいたのかあっさりとかわされて
しまう。
再び触れる唇。
わざとらしくリップ音をたてて。
そんなちょっぴり意地悪なキス。
『愛してる』
それは熱のせいだったのか。
もう聞こえるはずのない心の声がそっと耳に響いた
きがした─────。
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