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バレンタインSS
キッチンでその物体とにらめっこすること数十分。
どんなに念じても、一度作ってしまった物は元には戻らない。
チラリ時計を確認する。
残念だけどタイムリミットが近い。
「…はぁ。」
ため息が虚しく部屋に響く。
こんなことになるなら、学生時代にでももっと勉強しておけばよかった。
とりあえずこれを何とかして、証拠隠滅しないと
いけない。
さて、どうしよう。
捨てるのは流石に勿体ないし、やっぱり食べるしかないか。
なんてことを考えていると…
「何やってるの?」
まさかの昴君が後ろからひょこっと顔を出して
きた。
「す、昴君!?早かったね?」
慌ててそれを後ろ手に隠そうとしたけど時既に
遅し。
その視線の先にはそれがしっかりとある。
何とか笑顔で誤魔化そうとしたけど、駄目だった。
「真白さん。それ、俺のですよね?」
「………。」
もう逃げられない。
観念した私はそっとその物体…チョコレートの
失敗作を昴君の前に出した。
どうしてこんな謎な形になってしまったんだろう。
ああ、もう今すぐ消えてしまいたい。
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