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「バレンタインに手作りチョコを頑張ってみたんだけど…見ての通り失敗しちゃった。」
昴君はクスリと笑う。
恥ずかしい。
私が不器用で料理が出来ないのはもちろんバレてるけど、これは恥ずかし過ぎる。
居たたまれなくなった私は咄嗟に、チョコを隠そうとした。
「ごめんね。来年頑張るから今年は既製品で我慢
して…」
「ダメ。」
言いながら、ひょいっとチョコと言えるのか分からない物体をつまむ昴君。
あっと思った時にはもう既に口の中に。
呆然と見守る私にサラリと言った。
「うん、このチョコ形は悪いけど味は美味しい。」
「嘘っ…」
「嘘じゃないよ。味見してみる?」
なんて言ってグイッと私の腰を引き寄せると、今さっきチョコを食べた唇でキスをされる。
とろりと熱い舌が割って入ってきて、私の口の中にチョコの味が広がった。
甘い甘いチョコの味が。
「んっ………」
最後にペロリと唇を舐めて、チョコだけじゃなくてしっかりと私の唇も味わった昴君はニコりと微笑んだ。
相変わらずの王子スマイルで。
「ご馳走さまでした。」
真っ赤になってるはずの頬を両手で抑えながら
来年こそは必ず成功させようと強く心に決めた
んだ───。
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