聞こえるはずのない声

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拍手から悲鳴にも似た歓声やらが起こる中 手の中にあるブーケをただただ見つめている。 すかさず群れの中から知佳ちゃんがやってきた。 「いいなー。 次は真白の番か。」 「ええっ!? まず相手が居ないから。」 本当に羨ましそうな顔をされては申し訳なくなる。 私だって結婚願望はあるけど、相手も居ないし 作れる自信もないし。 ブーケをもらえたのはちょっと嬉しいけど どうしたものかなって思っていたら、突然会社の 男性陣が乗り出してきた。 「それなら俺が立候補しようかな?」 「俺も。」 「あ、俺もよろしくお願いします!」 先輩や同期や後輩まで、次々に上がるそんな声。 普段、なるべく関わらないように距離を置いて 過ごして来たから、こんなことは初めてでどうしたらいいか分からない。 これってからかわれてるんだよね…? 助けを求めて知佳ちゃんに視線を送っても ニヤニヤしながら見てるだけ。 最悪なことにそこに部長まで加わった。 「はははっ。よかったじゃないか東城! 選り取り緑だぞ!」 「そ、そんなっ…。」 誰か助けて欲しい。 こんなにたくさんの人に囲まれるのは苦手だし しかも何だかよく分からないことになってるし。 逃げたくて、一歩後退りした私は慣れないヒール のせいでバランスを崩す。 「あっ…」 コケる…! そう思った時、誰かがさっと私の肩を支えて くれた。
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