聞こえるはずのない声

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「大丈夫ですか?」 聞こえてきたのは聞きなれた瀬戸君の声。 そのことにホッとしたのに─── 【真白さんと結婚するのは俺だ。】 何故か聞こえてきたもう一つの声。 えっと思ってすぐに振り向いた。 もちろんそこには瀬戸君が居る。 相変わらずの爽やかな王子スマイルを浮かべて。 そう。 確かに今、私の肩に触れているのは瀬戸君。 そして聞こえてきたもう一つの声も瀬戸君の ものだった。 「皆さんあんまり真白さんをいじめたら駄目 ですよ。」 【こいつら全員俺の敵か。 まあ、想定内だけどな。】 更に聞こえてくる声。 私の肩に手を置いている瀬戸君は、さっきと 変わらず王子スマイルなのに、聞こえてくる 心の声はまるで別人。 「でも、せっかくだから僕も立候補させて もらおうかな?」 そんな甘い台詞を吐きながら、その綺麗なお顔で 見つめてきた瀬戸君。 いつもだったら、何言ってるの!とか… からかわないで!とか返せるはずだけど、何も 言えなくなってしまった。 だって─── 【真白さん。俺と結婚しよう。】 聞こえるはずのない瀬戸君の心の声が、私に プロポーズをしていたから。
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