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惑わせる声
───後輩の結婚式以来、瀬戸君の心の声が
聞こえることはなかった。
月曜日出社して、然り気無くぶつかったりして
何回か試したけど結果は同じ。
やっぱり心の声は聞こえない。
…だったらあれは何だったんだろう?
あの時聞こえてきた声は、絶対に瀬戸君の
声だった。
ただその内容があまりに信じられないものだった
から、私は耳がおかしくなってしまったのかとさえ
思った。
初めは恐る恐る触れていたのが、だんだんいつも
通りになって、数日経った頃にはもうすっかり
気にしなくなってる。
そう。
きっとあれは何かの間違いだったんだ。
だって私と結婚したいなんて、そんなことあの
王子って呼ばれてる瀬戸君が思うわけないもん。
私と瀬戸君はそういう関係じゃなくて、あくまで
お友達なんだから。
そうやって、あの結婚式のことを忘れ始めた頃
またディナーに誘われた───。
「真白さん?」
目の前に座る瀬戸君に声をかけられて、私はハッと
我に返る。
キョロキョロとさ迷わせていた視線を慌てて
元に戻す。
すると瀬戸君は、クスッと小さく笑いを溢した。
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