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「美味しいっ。」
「よかったです。」
思わず漏れた私の感想を聞いて、瀬戸君はふっと
表情を緩めた。
いつもは甘いカクテルばかりだから、シャンパンが
こんなに美味しいとは思わなくて、ついつい二口
三口と進んでしまう。
そんな私を瀬戸君は相変わらずにこにこしながら
見つめていた。
「真白さんはどれが食べたいですか?」
ふいにメニューを片手に聞かれて、私はまたハッと
する。
シャンパンを飲んでる場合じゃなかった。
「ねぇ、瀬戸君の話って何?」
───そう。
今日、瀬戸君に誘われた理由はただ一緒にディナー
をしようというだけじゃなかった。
私に話したいことがあるから、ゆっくり食事でも
しながらどうかと聞かれたんだ。
その時はまさかこんな高そうなお店に連れて
来られるとは思わなかったけど。
「まあ、それはもうちょっとしたら話しますよ。」
そう言ってまたにこりと微笑む瀬戸君。
何だかその笑顔に誤魔化されてしまった気がする。
わざわざこんな所に呼び出すってことは、よほど
大事な話なんじゃないかと思ったのに。
何の話だろうと考えている間に瀬戸君は、また
馴れた様子で今度はお料理の注文を始めた。
注文を受けたウェイターさんがテーブルを離れて
そっとこちらに視線を戻した瀬戸君は、少し
いつもと違うように感じる。
…何がとははっきり分からないけど。
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