惑わせる声

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───ふっと薄く目を開けるとそこは見慣れた 自分の部屋だった。 まだふわふわと夢の中に近い意識をゆっくりと 現実に戻していく。 …えっと、昨日は瀬戸君とディナーをして 私が酔っ払っちゃって、タクシーで送ってもらった んだよね。 本当に瀬戸君には申し訳ないことをしたなと、深く 反省した。 「んー…。」 瞬きをしてゆっくりと体を動かそうとした時、ある 違和感に気づく。 …あれ? 私、ベッドで寝てない。 不思議に思って今の状況を確認しようと顔を 上げたら、驚き過ぎて息が詰まった。 「おはようございます。」 「えっ…せ、瀬戸君っ!? 何で…?」 目の前には何故か瀬戸君のどアップ。 慌てて自分の体勢を見てみると、何故かベッドに 背を預けて床に座っていた。 しかも瀬戸君の腕を枕にして。 ガバッと上体を起こすと、瀬戸君はにこりと 微笑んだ。 「昨日、真白さんベッドに行き着く前にここで 寝ちゃったんですよ。」 「えぇっ!?」 タクシーに乗った所から全く記憶がない。 でも、しっかりと掛け布団をかけられていることを 考えると、どうやらそれは事実らしい。 どうしよう。 瀬戸君に多大なる迷惑をかけてしまった。 「ごめんっ。本当にごめんね!」 半泣きで謝る私とは対照的に、瀬戸君はどこか 楽しそうにクスリと笑う。 「大丈夫ですよ。 お陰で真白さんの寝起きの顔も見れましたし。」
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