聞こえるはずのない声

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「真白さん、男性恐怖症なんですよね?」 「う…うん。まあ、そんな感じなのかな。」 たまに人とぶつかったりしてビクンと大きな反応を 見せることに気づいた瀬戸君は、私のことを男性 恐怖症だと思ってる。 別に触れられることが苦手なのは男性に限った ことじゃないけど、まさか人の心の声が聞こえる なんて言えるわけもなくて、話を合わせた。 「さっきもビクついてましたよね。」 「うん…。」 「だったら、どうして僕は平気なんですか?」 瀬戸君の瞳が真っ直ぐ私を映してる。 「えっ…?」 「僕がこうやって触っても、真白さん全然 気にしないじゃないですか。」 何でだろう。 いつもニコニコしてる瀬戸君は、珍しく怒って いるように感じる。 でも、何か怒られるようなことをしたかな? 更に首を傾げた私を瀬戸君はクイッと手を引いて 引き寄せた。 「僕のこと、ちゃんと男だと認識してますか?」 ───目の前に王子と呼ばれる瀬戸君の整った 顔があって、一瞬時間が止まったような気がする。 すぐにハッと我に返った私は、慌てて口を開いた。 「うん!瀬戸君はちゃんと男の人だよ。 まつ毛長くて羨ましいなーとか、お肌ツヤツヤで いいなーとか思っちゃうけど、カッコいいと 思ってるよ!」 「………。」 瀬戸君は整った綺麗な顔をしてるから、そのことで 昔からかわれたりしたことがあるって言ってたのを 思い出した私。 男として認識してるかなんて、そんなことを聞いて きたのはきっとそのことを気にしてるんじゃない かと思った。
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