聞こえるはずのない声

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全力でフォローしたつもりだったのに、瀬戸君は あからさまなため息をつく。 私は何か間違ってしまったのかな? 不安になって恐る恐る顔色を伺った。 「まあ、今はとりあえず男だって認識されてれば いいです。」 瀬戸君の言っていることはよく分からない。 だっていくら綺麗な顔をしていたからと言っても ちゃんと男の人なのに。 …それとも私の解釈が間違ってる? でもそんなことより何より、もっと大事なことが あるんだ。 いつの間にか繋がれていた手をぎゅうっと握り 返す。 すると、瀬戸君は少し驚いた顔をした。 「あのね…瀬戸君はね、大丈夫なの。」 何て言ったら伝わるのかな。 上手く言葉に出来そうにないけど、ゆっくりと 形にしていく。 「男とか女とかそういうことじゃなくて、きっと 瀬戸君だから大丈夫なんだと思う。」 ───触れることを怖がらなくていい人。 そんな人に出会ったのは本当に初めて。 家族でさえ時々触れることを戸惑ってしまうから 私にとって瀬戸君は、本当に大事な存在なんだ。 何で心の声が聞こえないのかは分からないけど。 私があまりに必死な顔をしていたからか、瀬戸君は 突然ぷはって吹き出した。 「ははっ。真白さんってほんと…」 ポツリと呟かれたその言葉は、最後まで 聞こえない。
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