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こうやって触れても心の声は聞こえない。
でももう聞く必要がないと思ってる。
だって信じてるから。
『男とか女とかそういうことじゃなくて、きっと
瀬戸君だから大丈夫なんだと思う。』
いつだったか私が口にしたその言葉が全て。
心の声が聞こえないとか聞こえるとか関係なくて
彼だから大丈夫なんだって、そう思う。
これから先、もしも私がまた不安になっちゃった
としても彼はその度に私に伝えてくれるはずだ。
心の声を。
「 ────── 」
ブーケトスをした瞬間、周りの歓声に交じって
耳に入ってきた声。
驚いて顔を上げた先には私だけを見つめる瞳が。
その表情を見て、今の言葉に嘘はないってはっきり
分かった。
だから私は泣き出しそうになるのを堪えて
精一杯の笑顔を作る。
そんな私の耳元に唇を寄せて、彼はもう一度
囁いた。
愛してる──────
そう囁く君の声が聞こえる。
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