ss/ 私の声

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気まずい沈黙。 そこからも瀬戸君が何かに怒っていることは 明白で、私は顔色を伺いながらもう一度声を かける。 「瀬戸君?何か怒ってる…?」 前を向いていた視線が私に向いた。 それと同時に止まる足。 じーっと痛いくらいの眼差しを私に向けていた 瀬戸君はふいに口を開いた。 「いつまで俺は"瀬戸君"なんですか?」 「えっ?」 どんな言葉が飛び出してくるんだろうと構えて いたら、聞こえてきたのはあからさまに不機嫌な 声でしかも内容はよく分からない。 首を傾げるしかなかった私に、瀬戸君は話を 続ける。 「俺は真白さんにプロポーズしました。 それを真白さんは受けてくれましたよね?」 「うん。」 「正式に婚約して、今日もこうやって結婚式に 向けて準備を進めてる。」  「そうだね。」 「来週には籍を入れる予定ですよね?」 「うん。」  「ちゃんと分かってますか?」 瀬戸君が今、並びたてたことは事実でそれは もちろん私も分かってること。 でも他に何か違う意味があるのかな? 言いたいことがやっぱりよく分からなくて更に 首を傾げた私に、瀬戸君はずいっと顔を寄せた。
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