ss/ 私の声

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「もう真白さんも"瀬戸"になるんですよ。 いい加減、名前で呼んでくれてもいいんじゃない ですか?」 その時、私は申し訳ないけどキュンとして しまった。 瀬戸君は何か怒ってるのだとばかり思ってたけど 違ったんだ。 まあ、確かに怒ってはいるんだけど正確に言うと 拗ねてる。 だってほら、今の表情はいつものあの王子様の 雰囲気は全くなくて、むしろ子供っぽくてちょっと 可愛いな、なんて思う。 …そっかあ。 全然気づかなかったけど、確かにもう"瀬戸君"は おかしいよね。 繋いだままの手を少し引いてから 「ごめんね。昴君。」 …って初めて彼の名前を呼んだ。 その慣れない響きに何だかくすぐったくなる。 だけど妙に幸せな気分になった。 ふふふっと思わず照れ笑いを浮かべた私とは 対照的に、昴君は顔をバッと反らしてしまう。 私はまた何か怒らせてしまったのかな? 「昴君?」 「………。」 「ねぇ、昴君どうしたの?」 ぐいぐいと手を引っ張っていた私を突然引き寄せた 昴君は、次の瞬間にはぎゅーっと胸に閉じ込める。 一体何事かとバタバタしてた私の耳元で、ふいに 小さく囁いた。 「真白さんってほんと…天然小悪魔だよね。」
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