聞こえるはずのない声

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聞こえるはずのない声

私、東城真白(とうじょう ましろ)はごく普通の 社会人。 年齢は今年で26歳。 世間で流行りの、アラサーと言われる年代に突入 してしまった。 そして独身、彼氏なし。 結婚願望は人並みにはあるけど、人とのお付き合いが昔から苦手。 何故かと言うとそれは…私には不思議な力が あるから。 小さい頃から人に触れると、その人の心の声が 聞こえてしまう。 そのことは家族以外誰も知らない。 誰にも言わずに、そして知られないように ひっそりと静かに生きてきた。  どんなに触れないように気をつけても、ふいに ぶつかってしまったりすることがある。 そんな時、大抵その人が話していることと心の声は だいぶ違う。 でも、それが普通なんだと思う。 思ったことをそのまま口に出来るのなんて、子供 くらいなものなんだ。 学生の頃はその違いに嫌になったりもしたけど それなりに社会人をやっているうちに、自分の中で しょうがないって思えるようになってきた。 それでもなるべく人に触れないように気をつけて きたけど、何故か─── ただ一人だけ、触れても心の声が聞こえない人が 居る。
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