番外編③ さらばミツハシ part3

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目を開けると、まっ白な天井が見えた。 あれ?家の天井じゃないな…。 かすれた声で「ここどこ?」とつぶやく…。 「病院だよ」と応答する声が聞こえた。 華ちゃんが…心配そうに弥生を見下ろしていた。 どうやら、今ベッドに寝かされているらしい。 「目覚めて良かった~。本当に良かったよ~」 華絵は安堵して、弥生の手を握りながらしゃがみこむ。 そして半分泣き声で、言った。 「あの綺麗な人、目を離したすきに、突然接待ルームに行ったんよ。そのあと弥生ちゃん倒れたって聞いてな。何かされてたらどうしようって…。止められなくてごめん」 「大丈夫よ」 華絵の手を、優しく撫でた。 鼻をグズグズさせながら華絵が言う。 「先生呼んでもええ? 目が覚めたらナースコールしてほしいって言われてるよ」 「うん、いいよ」 華絵はナースコールをビーと押した。 「長田さんもさっきまでおったんだけど、別の用事で帰ってしまったの。弥生ちゃんの彼氏?っていいかしら…。も、東京に帰ってしまったんだよ」 …勇二らしい。 面倒なことが起きる前に、逃げたわけか。 でもまあこれで、愛媛までもう来ることはないだろう。運良く厄介払いができたと思おう。 勇二=弥生の彼氏だと、 真実子に誤解されたままだったが、 華ちゃんには本当のことを言っておきたかった。 「ちなみにアイツは彼氏じゃない、元の恋人」 「ほうなん…。雰囲気が少し武に似てるかな、と思ったけど」 「中身は全然違うでしょう?」 華ちゃんはためらいもなく「うん」とうなずいた。 華絵の旦那の武ならば、華絵が倒れたとなれば、つきっきりで看病するだろう。 その反面、そそくさと逃げるように帰った勇二…。華絵は強い不信感を持ったようだった。 先生がやって来て、弥生と2人きりにして欲しいので華絵に部屋から出ていくように告げたが、弥生が「家族のような人だからここにいても構いません」と、押し止めた。 先生が「過労です」と言ったときには(やっぱりね)とホッとした。  …でもその後が問題だった。 「…妊娠の兆候があります」 華絵が驚きのあまり、「ひゃっ!」と声をあげた。 「妊娠…されてる可能性が高いです」 先生がダメ押しで、再び告げた。 弥生の頭にまっさきに浮かんだのは、 (神様ありがとうございます…)だった。 未婚の母になる戸惑いももちろんあったが、三橋さんとの子どもが産めるのだ、 あの日はギリギリ安全日、でも奇跡が起きた。 喜びが溢れた。 先生が部屋からいなくなり、絶句している華絵に「これまでのこと話していい?」と聞くと。 華絵は頭を勢いよく縦にふった。 「父親は…元恋人?」 「違う! この子の父親は……」 弥生が愛おしそうにお腹を撫でると。 いきなり、真実子の形相がフラッシュバックする。 『どんな手を使っても引き裂いてやる!』 美しい顔が、一瞬般若のような顔になっていた…。 もしも三橋の子どもをみごもっていることが、真実子にバレたら…。 弥生は「ごめん。やっぱり今はまだ言えないわ」と下を向いた。 華絵のことだから、「そう、わかった」と言って引き下がると思っていたのだが…。 「弥生ちゃん! なんで? さっき私のこと家族みたいって言ってくれたじゃない。どんな相手でも私は…絶対反対しないし。こう見えて口は固いよ。信用してよ!」 華絵にしては、珍しく弥生につっかかる。 こんな夜遅くまで、私を心配して待ってくれている子なんだ。信用できる。と弥生も思い直した…。 「じゃあ、全部話するね」と語りだした。
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