2月か、もしかしたらもっと前

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2月か、もしかしたらもっと前

 歯を磨いた後にどら焼きを食べたくなった。  どうするべきなのか。  まぁ我慢すべきなのは僕にだって解るが、事はそんな単純な話ではない。  なぜならとても食べたいし、都合よく手元にどら焼きがある。もう食べることはほぼ確定している。  じゃあ無条件でどら焼きにかぶりつくかと言われれば、事はそう単純な話ではない。  食べたらもう一度歯を磨かねばならない。  とても面倒臭い。  なら食べるなと言われればそれでおしまいなのだけど、もう食べることは確定しているので、それを破るとおそらく宇宙の因果律が狂ってとんでもないことになる。具体的に言えばどら焼きに対する想いが溢れ出して眠れない。僕は気持ち良く寝たいのだ。  しかし歯は磨きたくない。でも食べたい。  でも磨きたくない。絶対に磨きたくない。  しかしもう、食べなければならない。  二律背反。狂おしい。  何故どら焼きを食べたら歯を磨かねばならないのだろう。何故神は虫歯なんて業を我々に与えたもうたのか。別に甘いモノを食べても虫歯にならない、そんな優しい世界であってもよかったんじゃないだろうか。もし生まれ変わりなんてものが有るなら、次はそんな素敵な因果の基に創られた世界に生まれたい。  もし僕がこの世界から消えて塵になったとしても、どうか忘れないでほしい。1人の人間が、どら焼きへの愛と歯磨きへの哀しみを背負って懸命に生き抜いたことを。  そして考える。僕は固定観念に囚われているのではないかと。古き思想からの脱却。新たな発想こそが進歩への予兆。少し考え方を変えれば、きっと何かが変わるはず。  なので僕はどら焼きを食べる。  歯は磨かない。  1日くらい、大丈夫と信じて。
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