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12月。間違いなく。
新車を買った。
もうウキウキ。
軽自動車だけど初めて新車を買ったものだから、ある程度知人に見せびらかす。もちろん高い車ではないけど、買って3ヶ月経ってもまだわりと気に入っている。
なんにせよ車って便利だ。
特に田舎に住んでいると、有るのと無いのでは活動範囲が段違い。これでもうコンビニに行くために自転車で峠を1つ越えるという苦行から解放される。クマいたし。あれはヤバい。
雨の日だって濡れないし、風の日だって倒れない。雪が降ってもへっちゃら。
そう思って雪の日に出掛けたら滑って車が大破した。
ものの見事に2回転しながら岩壁に突っ込んだ。
ふざけんな。
まだ買って3ヶ月なのに。
一応保険で全額おりると言うけどさ……何なのもう……
しかし困った。雪が積もりまくっているので買い物にも行けない。雪の中、自転車で峠越えはたぶん死ぬ。代車を用意してくれるらしいけど、代車が届くまで3日くらい掛かるという。だから田舎って辛い。
仕方がないので次の日、職場の仲がいい先輩に買い出しに連れてって欲しいと頼む。
いいよ、と言ってくれたのだが、何だか顔色がおかしい。とても辛そう。体調が悪いらしい。
流石に忍びないので辞退すると、それを見ていた別の先輩が連れていってくれると言う。
助かった。アンタの事は別に好きではなかったけど、これからは見る目を変えてやろう。
そうして先輩Bの車に乗せてもらい、雪がまだまだ深い峠を越える。
とりあえず買えるだけ食料を買い込んで家に籠っていよう。そう思いながら峠のふもとの十字路で車を止め信号待ちをしていると、対向車線を車が走ってくる。なにやら様子がおかしい。信号は赤なのに減速が甘い。どうみても雪で滑っている。マジかよ。
吸い込まれるように先輩の車にそのままぶつかる。運転席のエアバッグが広がる。僕の座る助手席のエアバッグは開かない。ふざけんな。
幸い誰にも怪我は無かったけれど、2日続けて事故に遭ったのはもう呪われているとしか思えない。
呆然と立ちすくみ事故現場を眺める僕に先輩Aから電話が掛かってくる。
ごめん。インフルエンザだったわ。
いやもうアンタの体調とかどうでもいいから。
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