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4月1日
社会人になってしまった。
まさか自分が働くことになろうとは思っていなかったので、何か嫌だ。まぁ一応希望する職種には就いたのだけど、何だかやる気が一向に上がらない。新入社員はやる気に溢れているものと聞いたんだけど、もう既にやる気が無い僕は一体何社員に分類されるのだろう。
まぁ「なりたい」とは思っていたものの、「なったあと何をしたいか」なんて考えてもいなかったから、なんというか、プラモデルを買ったものの買ったこと自体に満足して結局組み立てないというか、そんな感じなのかもしれない。
でも僕にやる気があろうと無かろうと、導入研修やら何やらは勝手に進んでいくもので、気が付いたら新入社員全員に対する全体研修が終わり、それぞれの配属先を言い渡される段となった。
僕の配属先は正直聞いたこともないような小さな田舎町だった。
まぁ別に場所はどこでも構わないのだけど、小さな規模の職場らしく配属が僕を含めてたった2人だったことが心もとない。300人位入社したのに2人。意味がわからない。同期とかとキャッキャウフフしたかったのに、たった2人。キャッキャウフフはもとよりキャッキャすらできない。一緒に配属となった奴が研修で同じグループだったリーダー的存在だったことが唯一の救いか。
でも正直話が合うとは思えない。なんかやたらやる気に満ち溢れて熱血してたし。さっきも2人で頑張って行こうぜ的な事を熱く語っていたし。僕がひねてるだけかもしれないけど、不安だ。でもまぁ、頼りにはしている。
2人で熱い握手を交わしてその日は自宅に帰る。帰り道が途中までそいつと同じだったので、少し話をした。熱い握手を交わしたあと数分間一緒だったことは何か違和感を覚えたが、帰り道が一緒だとは知らなかったので仕方がない。相変わらず奴は俺はこうなりたいとか、会社はこうあるべきとかを熱く語っていた。
まぁ頑張れ。僕は頑張らないけど。
数日の引っ越し休暇を挟んで現場に移動することになった。現場までは、その現場の責任者が引率してくれる手筈になっていた。
一応、集合時間の15分前に集合場所に来た。
奴はまだ来ていない。
あれだけ熱く語っていたのに、何だか拍子抜けする。
暫く経ってもまだ来ない。
場所を間違えたのではと自分を疑い始めたころ、責任者がやってくる。
初日から目上の人を待たせるなんて何て奴だ。
責任者と挨拶を交わしたあと、責任者が言う。
彼は退職したので来ないよ。
配属先が田舎過ぎて嫌になったらしい。
なんだったんだアイツは。
そうして初めての上司と2人、配属先まで数時間、特に続かない会話にお互い気を使いながら電車に揺られていた。
まぁいいさ。すぐにこんな会社辞めてやる。
僕を孤独に貶めたこと、後悔させてやる。
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