3月12日くらい

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3月12日くらい

床屋に行った。 低価格で20分くらいで切ってくれるところ。 2000円弱という破格の料金でシャンプーや顔剃りまでしてくれるその企業努力に恐れ入る。 ひっきりなしに入店する客達の要望にスピーディーに対応してくれる店員さん達にも頭が下がる。 超スピードで髪を整え、次いで顔剃りが始まる。 とんでもなく気持ちが良い。 これに2000円払っていると言っても過言ではないのかもしれない。 とんでもなく気持ちが良いことは間違いないのだが、何だか無性に喉の奥がカサつき、咳払いをしたくて堪らなくなった。 今、まさに眉毛の下あたりを剃っている。 危険過ぎる。 危険を犯して軽く咳払いしてみるか。 それとも一度理容師さんの手が止まるまで待つか。 でも例のごとく僕の顔には手拭いが掛けられており、理容師さんの挙動が掴めない。 一体いつ手が離れるのか予想がつかない。 いっそ声を掛けてみるか。 でももしかしたら急に声を掛けたことに驚いて理容師さんの手元が狂い、僕の眉毛は一刀両断されてしまうのではないか。 我慢すればいいのか。 我慢するしかないのか。 でもいつまで我慢ができるのか。 僕の喉はもうカッサカサだ。 そう考えていたらすぐに顔剃りが終わった。 僕は安心して咳払いした。 全てがスピーディーなのでこの形態の床屋って好き。 でもあの至福の時間を半分くらい悩んで過ごしてしまったことに残念な気持ちになった。 最後にシャンプーが始まる。 とんでもなく気持ちが良い。 これに2000円払っていると言っても過言ではない。 とんでもなく気持ちが良いことは間違いないのだけれど、もう少し爪を立ててもらってもいいですよ、と一声が掛けられず無言で終わらせてしまった僕は、たぶん一生その一言が言えずに会計後に反省し続けるのだろう。 でもサッパリしたので結局は何でもいい。
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