9月後半

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9月後半

思いを馳せたい。 とりあえず思いを馳せたい。 割りと題材は何でもいいので兎にも角にも思いを馳せたい。  思いを馳せることによって自身の哲学性と文化的な追求力を高め、自分が如何に高尚な人間であるかを認識し己の優位性を確固たるモノに煮詰め直し悦に入りたい。端的に言えば文化人を気取りたい。誰にも知られることなく、一人で思いを馳せる。なんて渋いんだ。  しかし何に対して思いを馳せればいいのかよくわからない。何でもいいのだろうけど、やっぱりそれっぽいことに思いを馳せなければ、それっぽくはならない。  どうすればいいだろうか。パッと思い付くのは食べ物とかだけど、何だか少し俗っぽい気もする。 焼きソバに思いを馳せるのは、たぶん今日ではない。  やっぱりこういう時は社会情勢だとか人道的な問題だとか、人類が抱く課題的なものに思いを馳せるべきな気がする。そのくらい大きなモノでなければ、今の僕の思いを馳せたい欲求を満足させることはできない。  なので昨今の世界情勢に対して我々ができること、やらねばならないことに関して思いを馳せようと思う。  でもよく考えたらその辺りに対して何の知識も興味も無いので、中々思いを馳せるに至れない。  残念だ。もし僕にその辺りの知識と興味があればとてつもなく思いを馳せるのに、僕には何の興味も知識も無いから思いを馳せらせる事ができない。残念だ。僕が本気で思いを馳せたら、もうとんでもないくらい思いが馳せるハズなのに、僕に知識と興味が無いばっかりに全然思いが馳せない。思いが馳せた挙げ句思いが爆ぜて全ての思いが爆発するくらい馳せる事ができたのに、今の僕にはそれができない。残念でならない。  そうこう考えていたら、宅配ピザが届いた。 そうだ今日はパーティー。僕の誕生日。 難しいことは抜きにして最高に騒いでハシャげばいいのだ。 一人でピザを噛りながら最終的に孤独について思いを馳せた。
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