羽虫

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ー6ー  家から飛び出すと暗闇の中を無我夢中に走り続けた。視界を覆う羽虫の恐怖が余計に体を焦らせる。息は絶え絶えで呼吸をするたびヒューヒューと音を立てて耳障りで仕方がない。  街頭には蛾や羽虫が寄り付き黒い塊を作りあげて、それが目に入るたびに恐怖心が全身を襲い震えが走る。  走りに走り続け、ようやく港に着いた時には視界がぼやけ、ぐらりと歪んでいた。  ただ走っていただけだというのにここまで酸欠状態になることはありえない。いくら不衛生で不摂生な生活を送っているとは言え、体力は人並みにある。しばらくタバコもやめていたのだからこんなに息切れするなんてこともなかった。  前にかがんで膝に手を置き呼吸を整える。目を動かしてあたりを見渡し自販機を探すと以前と同じ位置で怪しげに白く淡い光を放っていた。  震える足でぎこちなく歩いて自販機に近づくとタバコが同じように売られている。財布から急いで1万円札を取り出して投入すると、ボタンが赤く光る。  これで救われたと笑みを浮かべてボタンを押すがタバコが出てくることはない。  いくら押そうとも出てこない事に憤りを感じて自販機を殴りつけた!   「何故出てこない!クソッ!!」
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